失業保険 増やす方法 受給額

失業保険を増やす方法!受給額が増える4つのやり方

失業保険(失業給付金・失業手当)は、倒産や解雇などの会社都合や、転職などの自己都合で会社を辞めて失業してしまった人の生活を支える大事なセーフティーネットです。

今まで雇用保険料を支払っていたからこそ失業保険が支給され、失業保険が支給されるからこそ失業中の生活が安定し、不安なく転職活動を行うことができます。

そんな失業保険ですが、支給される金額の計算方法は法律で決まっています。とはいえ、1円でも多くもらいたいと思うのが多くの人の本音でしょう。

ということで今回は「失業保険の受給額を増やせる4つの方法」として裏技を紹介してみます。

失業保険を増やす方法
失業保険の計算方法

失業保険の受給額を増やす方法を紹介する前に、まずは失業保険の受給額がどのように決まるのかについて確認しておきましょう。

失業保険は「基本手当日額」と「所定給付日数」によって受給できる総額が決まります。

基本手当日額の計算方法

失業保険における基本手当日額とは、失業1日あたりの給付金額を指します。

つまり「1日あたりいくら」という金額が弾き出されるわけです。

そして基本手当日額を計算するには、最初に「賃金日額」を計算する必要があります。

賃金日額の計算方法は「離職日直前6ヶ月に毎月支払われた賃金(賞与等を除く)の合計 ÷ 180日」となります。

こうして求められた賃金日額を元に基本手当日額を計算するのですが、基本手当日額の計算方法は「賃金日額 × 給付率(45~80%)」となり、給付率は基本的には賃金日額が低いほど高くなります。

年齢と賃金日額、そして給付率ごとに基本手当日額をまとめたのが以下の表です。

賃金日額 給付率 基本手当日額
29歳以下
2,657円(下限額)以上5,030円未満 80% 2,125円(下限額)~4,023円
5,030円以上12,380円以下 50~80% 4,024円~6,190円
12,380円超13,670円以下 50% 6,190円~6,835円
13,670円(上限額)超 6,835円(上限額)
30~44歳
2,657円(下限額)以上5,030円未満 80% 2,125円(下限額)~4,023円
5,030円以上12,380円以下 50~80% 4,024円~6,190円
12,380円超15,190円以下 50% 6,190円~7,595円
15,190円(上限額)超 7,595円(上限額)
45~59歳
2,657円(下限額)以上5,030円未満 80% 2,125円(下限額)~4,023円
5,030円以上12,380円以下 50~80% 4,024円~6,190円
12,380円超16,710円以下 50% 6,190円~8,355円
16,710円(上限額)超 8,355円(上限額)
60~64歳
2,657円(下限額)以上5,030円未満 80% 2,125円(下限額)~4,023円
5,030円以上11,120円以下 45~80% 4,024円~5,004円
11,120円超15,950円以下 45% 5,004円~7,177円
15,950円(上限額)超 7,177円(上限額)

所定給付日数の計算方法

失業保険における「所定給付日数」とは、基本手当日額を受け取れる給付日数の上限のことを指します。

所定給付日数は、年齢や雇用保険の加入期間、そして退職理由(自己都合退職か会社都合退職か)によって変わってきます。

これらをまとめたものが、以下の表です。

  (表は横にスクロールします)

退職理由 年齢 被保険者であった期間
1年未満 1年以上 5年以上 10年以上 20年以上
5年未満 10年未満 20年未満
会社都合退職 30歳未満 90日 90日 120日 180日 -
30歳以上 120日 180日 210日 240日
35歳未満
35歳以上 150日 240日 270日
45歳未満
45歳以上 180日 240日 270日 330日
60歳未満
60歳以上 150日 180日 210日 240日
65歳未満
自己都合退職(原則) 65歳未満 90日 90日 120日 150日

原則として「自己都合退職よりも会社都合退職の方が」「年齢が低い人よりも高い人の方が」「雇用保険の加入期間が長い方が」所定給付日数がより長くなっています。
 

失業手当の受給額の計算例

それではここで、実際に以下のような人をモデルに、失業手当の受給額をシミュレーションしてみましょう。

  • 離職時の年齢は26歳
  • 雇用保険の加入期間は4年
  • 離職日の直前6ヶ月の賃金の合計は120万円(20万円 × 6ヶ月)
  • 退職理由は「キャリアアップのため」(= 自己都合退職)

この場合の賃金日額は、120万円 ÷ 180日 = 6,666円になります。

給付率は50~80%で、基本手当日額は4,024円~6,190円です。給付率の計算方法はやや複雑なのでここでは省略しますが、上記の例の場合の基本手当日額は4,887円になります。

所定給付日数は90日なので、4,887円 × 90日 = 439,830円が失業保険の受給額の上限です。

 

失業保険の受給額を増やす4つの方法とは?

それでは次に、いよいよ失業保険の受給額を増やす方法を4つ紹介します。

失業保険の受給額を増やす方法
① 離職日直前6ヶ月の給与を増やす

1つめの方法は「離職日直前6ヶ月の給与総額をとにかく増やす」です。

これは最も単純な方法といえます。

ここでのポイントが、直近6ヶ月の給与総額とは「『基本給の総額』ではなく、あくまでも『支払われた賃金の総額』である」という点。

つまり直前6ヶ月の中に多額の残業手当が支給された月があったとしても、その残業手当は賃金日額を決める際の賃金総額に含めることができるのです。

そのため「退職するぞ!」と決めたら、向こう6ヶ月間は多少無理をしてでも残業をしまくって給与総額を高くしてしまうのは、非常に有効な作戦。
 
参考までに、前章でモデルとして取り上げた26歳の人で再度考えてみましょう。

先ほど計算した賃金総額・基本手当日額・失業手当総額は以下の通りです。

  • 賃金総額:120万円(20万円 × 6ヶ月)
  • 基本手当日額:4,887円
  • 失業手当総額:439,830円(4,887円 × 90日)

この人が毎月残業を頑張って毎月の給与が20万円から25万円にアップし、それを6ヶ月間続けた後に退職した場合、賃金総額・基本手当日額・失業手当総額は以下のようになります。

  • 賃金総額:150万円(25万円 × 6ヶ月)
  • 基本手当日額:5,542円
  • 失業手当総額:498,780円(5,542円 × 90日)

毎月の残業手当5万円 × 6ヶ月 = 30万円が賃金総額に上乗せされたことで、結果的に基本手当日額が4,887円 → 5,542円と655円アップし、受給できる失業保険の総額が439,830円 → 498,780円と58,950円アップすることになります。

残業代を5万円上乗せするのに必要な残業時間数は人によって変わりますが、月20日労働と仮定すると1日あたり2,500円の残業代を稼げばよいわけです。

残業代として総額30万円稼げる上、失業保険の総額が約6万円弱増えることを考えると、挑戦する価値はあるといえるでしょう。
 

失業保険の受給額を増やす方法
② 会社の繁忙期の直後に会社を退職する

2つめは「会社の繁忙期の直後に会社を退職する」です。

これは1つめの「離職日直前6ヶ月の給与総額をとにかく増やす」と関連しますが、サービス業などのように1年うちのどこかで明らかな繁忙期がある場合で、なおかつ繁忙期は残業や休日出勤、あるいは何らかのインセンティブがつきやすい場合は、その直後に退職するのがおすすめです。

理由はいうまでもなく「基本手当日額の計算の元になる直近6ヶ月の賃金総額が増やせるから」です。

毎月残業して平均的に稼ぐでも、繁忙期を利用して一気に稼ぐでも、残業しつつ繁忙期も頑張るでも、直近6ヶ月の賃金総額が増えるので、自分に合った方法をとると良いでしょう。
 

失業保険の受給額を増やす方法
③ 公共職業訓練を受ける

3つめは「公共職業訓練を受ける」です。

これはある意味では最も効果的な方法となります。

公共職業訓練とは、失業保険を受給している求職者を対象にハローワークが行っている職業訓練のこと。

就職に役立つ知識やスキルを獲得するための多種多様なコースが用意されており、基本的には無料で受講することができます。

求職者がこの公共職業訓練を受けると、失業保険の受給額の総額を増やす上で3つのメリットがあります。

【メリット1】自己都合退職の「給付制限期間」をなくすことができる

まず1つめのメリットが「自己都合退職の場合、2ヶ月間の『給付制限期間』がなくなる」という点です。

失業保険は解雇や倒産などが原因の「会社都合退職」の場合、ハローワークでの失業保険の手続き後に7日間の「待機期間」を経ればすぐに失業手当が支給されます。

しかし「別の職種に転職したい」「嫌になったから辞める」のような「自己都合退職」の場合、7日間の待機期間の後、更に2ヶ月間の給付制限期間が設けられています。

つまりハローワークでの失業保険の手続き後に2ヶ月以上経たないと、失業保険が給付されません。

しかし自己都合退職の場合でも公共職業訓練を受ければ、その開講日に2ヶ月の給付制限期間が解除されます。

以下に「自己都合退職で2023年2月20日にハローワークで失業認定を受けた人」が、公共職業訓練を受けない場合と、3月1日開講の公共職業訓練を受けた場合とで初回の失業保険振り込みまでどれくらい差が生じるかを比較してみましょう。

まず公共職業訓練を受けない場合です。

  • 2月20日:ハローワークで失業保険の手続き・受給資格決定
  • 2月27日:7日間の待機期間終了
  • 2月28日~:2ヶ月間の給付制限期間開始(4月27日まで)
  • 3月20日:初回認定日(支給なし)
  • 4月17日:2回目認定日
  • 4月28日:給付制限期間明け日(支給対象期間初日)
  • 5月15日:3回目認定日・1回目の失業保険振り込み(4月28日~4月30日分)

次に公共職業訓練を受けた場合です。

  • 2月20日:ハローワークで失業保険の手続き・受給資格決定
  • 2月27日:7日間の待機期間終了
  • 2月28日~:2ヶ月間の給付制限期間開始(4月27日まで)
  • 3月1日:公共職業訓練開始・給付制限期間解除
  • 3月20日:初回認定日
  • 4月15日:1回目の失業保険振り込み(3月分満額 = 28日分)

公共職業訓練を受けない場合、1回目の失業保険振り込みは5月15日まで待たないといけません。しかも初回振り込み額は、4月28日に給付制限期間が明けてから月末までの3日分です。

しかし3月1日開講の公共職業訓練を受けると、1回目の失業保険が4月15日に、3月分の満額が振り込まれます。

こうして比べてみると、両者の差はとても大きいことがわかります。
 

【メリット2】失業保険の給付期間の上限が延びる

先に紹介したように、失業保険は年齢や雇用保険の加入期間、そして退職理由によって給付期間が決められていますが、受講する公共職業訓練が失業保険の給付期間を超える場合、公共職業訓練の終了まで給付期間が延長されます。

例えば、先ほどから例に出している

  • 離職時の年齢は26歳
  • 雇用保険の加入期間は4年
  • 離職日の直前6ヶ月の賃金の合計は120万円(20万円 × 6ヶ月)
  • 退職理由は「キャリアアップのため」(= 自己都合退職)

という人を再びモデルケースにすると、この人の失業保険の給付期間は90日、失業保険の受給総額は439,830円になります。

しかし公共職業訓練の受講期間が90日以上になると、給付期間も延長され、結果的に受給総額も例えば以下のように増えます。

  • 90日:439,830円
  • 180日:879,660円
  • 360日:1,759,320円

公共職業訓練の中には、受講期間が1年や2年になるものもありますが、長期の訓練を受講する場合でも、公共職業訓練の終了まできちんと失業保険が延長給付されます。

公共職業訓練は失業保険の受給額を増やすという意味でも、スキルを身につけてキャリアアップを目指すという意味でも、受講を積極的に検討するとよいでしょう。

また公共職業訓練を受講していると、失業保険の受給手続きは訓練校が代行してくれるので、煩雑な手続きが省けるという点もメリットといえます。

いいとこづくめの公共職業訓練ですが、既に失業保険を受給中で、給付期間の残りが3分の1を切っている場合は公共職業訓練に申し込むことができません

自己都合退職で給付日数が90日の場合であれば、給付期間が31日以上残っていないと公共職業訓練に申し込むことはできない、ということ。申し込むタイミングには注意が必要です。
 

失業保険の受給額を増やす方法
④ 退職理由を自己都合退職から会社都合退職にできないか検討する

4つめは「退職理由を自己都合退職から会社都合退職にできないか検討する」です。

一見すると自己都合退職になりそうなケースでも、ハローワークに相談すると会社都合退職扱いにしてもらえるケースがあります。
 


 

具体的には「労働契約の未更新」や「『体力不足や心身の障害』『父母の扶養の必要性』『拠点移動による通勤不可能・通勤困難』などの正当な理由」に伴う自己都合退職などが「特定理由離職者」としてこれに該当します。

実質的に会社都合退職に近いような状況で自己都合退職に追い込まれた場合は、失業保険の手続き時にハローワークに事情を説明するようにしましょう。

会社都合退職の方が自己都合退職よりも受給期間が長くなりやすいので、失業保険の受給総額が増える可能性が高くなります

 

失業保険を増やす方法を積極活用しよう!

以上、失業保険の計算方法を紹介した上で、失業保険の受給額を増やすための4つの方法を紹介しました。

失業保険の受給額を増やすのに最も手っ取り早い方法は、やはり「離職日直前6ヶ月の給与総額をとにかく増やす」です。シミュレーションでも示したように、これは比較的簡単に失業保険の受給額を増やせます。

もっと大幅に増やしたい場合は、やはり「公共職業訓練を受ける」のがおすすめです。

何といっても「学びながらお金を受け取れる」というのは、とてもありがたい話。即戦力となれるスキルも身につけることができるので一石二鳥です。

いずれの方法も、不明点がある場合は必ずハローワークに相談するようにしましょう。