退職理由を自己都合から会社都合にする方法

退職理由を自己都合から会社都合にする方法

会社を退職する理由は様々ですが、大きくは「自己都合」「会社都合」の2つの理由に分けられます。

そして退職理由がこのどちらになるかは、退職後に受給する「失業給付金」(以下、失業手当と呼びます)の給付金額や給付期間に大きな影響を与えます。

失業手当の給付においては、会社都合退職の方が有利になるので、「本当は会社の都合で退職させられたのに、自己都合退職扱いで退職させられた」という場合、退職理由を会社都合退職に変えたいところです。

ということで今回は、会社の退職理由を自己都合から会社都合にする方法について紹介します。

理不尽な事情で会社を自己都合退職にさせられた人は、ハローワークで失業手当の手続きをする前にぜひご一読ください。

 

退職理由を自己都合から会社都合にする方法

結論から言うと、退職理由を自己都合から会社都合にする方法は「ハローワークで退職に至る経緯を説明し、会社都合退職に変更してもらう」ことで可能となります。

なぜ退職理由を会社都合から自己都合に変えるとよいのか

それは「失業手当の受給において、会社都合退職は自己都合退職に比べて優遇されているから」です。

まず、失業手当の仕組みについて少し見ておきましょう。

失業手当の仕組みにおいては「自己都合退職」「会社都合退職」という分類は使われず、「一般離職者」「特定受給資格者」「特定理由退職者」という分類となります。

一般離職者・特定受給資格者・特定理由退職者 の定義は、以下のようになります。

  • 一般離職者:自己都合退職者
  • 特定受給資格者:会社都合退職者、および自己都合退職者のうち「特定の理由」に該当する者
  • 特定理由離職者:一般離職者(自己都合退職者)のうち、離職理由が「特定の理由」に該当する者

失業給付における一般離職者・特定受給資格者・特定理由離職者の違いは、以下の通りです。

一般離職者(自己都合退職者) 特定受給資格者(会社都合退職者)・特定理由離職者
受給要件 離職日以前2年間に被保険者期間が通算12カ月以上あること 離職日以前1年間に被保険者期間が通算6カ月以上あること
待機期間 7日
給付制限期間 2ヵ月 なし
給付日数 90~150日 90~330日

これを見れば、自己都合退職が不利、会社都合退職が有利ということはわかると思います。
 

会社は自己都合退職にしたがる

会社側は倒産や解散などの明らかな会社都合があった場合は別にして、あまり会社都合退職にしたがらない、逆にいえば自己都合退職にしたがる傾向があります。

これは国から会社に給付される雇用関係の様々な給付金の給付条件に、過去の会社都合退職の有無やその人数を見られることがあるからです。

そのため、事実上のリストラであっても社員が自己都合で退職するように追い込むケースや、上司のパワハラやセクハラが原因で会社を去ったようなケースも、自己都合退職として処理されがちです。
 

自己都合退職か会社都合退職を決めるのはハローワーク

退職理由は会社が勝手に決めてしまう…と思っている方もいると思いますが、それはあくまでも“会社の言い分”です。

失業手当の手続きはハローワークで行いますが、その際に提出する「雇用保険被保険者離職票」の内容と、離職者へのヒアリングを元に、ハローワークが一般離職者・特定受給資格者・特定理由離職者の分類を行います。

そして離職票には会社が離職した社員の離職理由を記載しているのですが、上記のような事情で実際には会社都合退職にも関わらず自己都合退職と記載されているケースや、会社からの圧力で自己都合退職に追い込まれたケースなどがあります。

もし自身のケースがこれらに該当する場合、もう少し具体的にいうと「労働契約の未更新」や「正当と思われる理由」(例えば勤務先の拠点が通勤不可能な場所に移転したから退職した)のような事情でやむを得ず自己都合退職に至ったよう場合は、その事情をハローワークに詳しく説明するとよいでしょう。

そうすればハローワークの職権で、会社都合退職、もしくはそれに準ずる扱いにしてくれる(つまり特定受給資格者・特定理由離職者にしてくれる)ことがあります。

では、どんなケースの場合に「退職理由を自己都合から会社都合に変えてくれる」のでしょうか?詳しく見ていきましょう。

 

退職理由を自己都合から会社都合に変えられる具体的なケース

次に、退職理由を自己都合から会社都合に変えられる具体的なケースを紹介します。

その前に、先ほど触れた表に出てきた「一般離職者」「特定受給資格者」「特定理由離職者」について簡単に説明しましょう。

  • 一般離職者:自己都合退職者
  • 特定受給資格者:会社都合退職者、および自己都合退職者のうち「特定の理由」に該当する者
  • 特定理由離職者:一般離職者(自己都合退職者)のうち、離職理由が「特定の理由」に該当する者

まず一般離職者ですが、これは自己都合退職者のことです。

例えば「給料が安いから辞めたい」「別の業種で働きたいから転職する」といったケースが該当します。

そして会社都合退職者は特定受給資格者になります。

更に、自己都合退職者のうち「特定の理由」に該当する場合、その理由によって特定受給資格者もしくは特定理由離職者に分類されます。

そのため退職理由を自己都合から会社都合に変えるには「ハローワークで特定受給資格者か特定理由離職者に認定されればよい」ということになります。
 

特定受給資格者と特定理由退職者の違い

なお特定受給資格者と特定理由退職者の違いをざっくり簡単に表現すると、以下のようになります。

  • 特定受給資格者:会社の倒産や解雇などによる退職
  • 特定理由離職者:労働契約の未更新や「正当な理由」のある退職

 

特定受給資格者の定義

ハローワークが定める特定受給資格者の正確な範囲は、以下のようになっています。

Ⅰ.倒産等により離職した者

  1. ①会社の倒産(破産・民事再生・会社更生などの倒産手続きの申立てや手形の停止)による離職
  2. ②大量リストラによる離職
  3. ③会社の廃止・事業停止・解散による離職
  4. ④事業所の移転に伴う通勤困難による離職

Ⅱ.解雇等により離職した者

  1. 会社による解雇(「自己の責めに帰すべき重大な理由」による解雇は除く)による離職
  2. 労働契約の締結時に明示された労働条件が事実と著しく異なっていたことによる離職
  3. 2ヵ月以上3分の1以上、または離職の直前6ヵ月の間のうち3月の賃金(退職手当を除く)の不払いがあったことによる離職
  4. 労働者の予見できない事由で15%以上賃金がカットされたことによる離職
  5. 離職の直前6ヵ月のうち3月連続して45時間、1月で100時間または2~6月平均で月80時間を超える残業があったため、行政機関から危険を指摘されたにも関わらず、会社が必要な措置を講じなかったことによる離職
  6. 会社が職種転換・配置転換の際に必要な配慮をしてくれなかったことによる離職
  7. 期間の定めのある労働契約が更新され、雇用時点から継続して3年以上雇用されている場合、かつ契約更新を希望していたにも関わらず、契約更新がされなかったことによる離職
  8. 期間の定めのある労働契約の締結に際し、契約更新が明示された場合において、契約更新されなかった(1つ前の項目に該当する場合を除く)ことによる離職
  9. いわゆる「ハラスメント」があったことによる離職
  10. 会社から直接・間接に退職を迫られた(早期退職優遇制度に応募した場合は該当しない)ことによる離職
  11. 会社のせいでの休業が3ヵ月以上になったことによる離職
  12. 会社の業務が法令に違反したことによる離職

少し難しいのでかみ砕いて説明すると、まず会社の倒産や廃止・停止は完全に特定受給資格者になります。これは説明の必要はないでしょう。

また、大量リストラ(1ヶ月に30人以上の離職、社員の3分の1以上の離職など)の場合も会社都合での退職と扱われます。

そして事業所(支店や営業所、工場など)が移転して通勤が困難になった場合、「通えないから辞めます」と自ら退職した場合も会社都合退職にしてもらえます。

その他、

  • 解雇(つまりクビ、ただし自分の側に重大な理由がある場合を除く)
  • 労働条件(給与額や休日数など)の著しい相違
  • 賃金の3分の1を超える額の未払い
  • 賃金の85%未満への低下
  • 長時間の時間外労働(残業)
  • 妊娠中や出産後、子供の養育中や家族の介護中の労働の不当な強制や制限、職種転換への無配慮
  • 一定の条件下の労働契約の未更新
  • 上司や同僚からの嫌がらせやそれに対する会社の無配慮
  • 会社側からの退職勧奨(早期退職優遇制度を除く)
  • 会社側の都合による3ヶ月以上の休業
  • 会社側の法令違反、などによる退職

も、仮に自己都合退職であっても会社都合退職扱いとなり、特定受給対象者に認定される可能性があります。
 

特定理由離職者

一方、ハローワークが定める特定理由離職者の正確な範囲は、以下の通りです。

Ⅰ.期間の定めのある労働契約期間が満了し、かつ、更新を希望したにも関わらず更新されずに離職した者(2.の7番目、8番目に該当する場合を除く)(契約条項に「契約を更新する場合がある」と明記されているなど、更新の明示はあるが確約まではない場合がこの基準に該当)


Ⅱ.以下の正当な理由のある自己退職による離職

  • ①体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退による離職
  • ②妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険の受給期間延長措置を受けた
  • ③父もしくは母の死亡、疾病、負傷、扶養、または常時看護の必要な親族の疾病、負傷のための離職(家庭の事情の急変)
  • ④配偶者や扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となり離職
  • ⑤次の理由により通勤が不可能・困難になって離職
  • ⅰ)結婚による住所変更
  • ⅱ)育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用または親族等への保護の依頼
  • ⅲ)事業所の通勤困難な地への移転
  • ⅳ)自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされた
  • ⅴ)鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
  • ⅵ)事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
  • ⅶ)配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避

その他「特定受給資格者の範囲」のⅡの⑩(事業者から直接もしくは間接に退職するように勧奨を受けたことにより離職した者、ただし従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合はこれに該当しない)に該当しない人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等

こちらもかみ砕いて説明すると、まず期間の定めがある労働契約の期間が満了し、更新を希望したにも関わらず契約が更新されなかった場合は特定理由退職者に該当します。

さらに、

  • 体力不足や心身の障害、視力や聴力・触覚などの減退
  • 妊娠・出産・育児、死亡
  • 疾病・負傷などを理由とした父母の扶養や親族の疾病や負傷による常時介護
  • 単身赴任の困難、通勤困難や不可能
  • 希望退職制度に応じた場合(退職勧奨に該当する場合を除く)

なども特定理由退職者に認定される可能性が高くなります。

 

退職理由を会社都合退職に変えられるための「コツ」

ここまで「退職理由は自己都合退職と会社都合退職があること」「失業手当の受給には会社都合退職の方が有利なこと」「正当な理由があればハローワークで退職理由を会社都合退職に変えてもらえること」「失業手当の手続き上は『一般離職者』『特定受給資格者』『特定理由離職者』に分かれ、実質的な会社都合退職に変えるためには特定受給資格者か特定理由離職者に認定される必要があること」についてまとめました。

ここからは、特定受給資格者や特定理由離職者に認定されるための「コツ」を紹介します。
 

退職理由を会社都合に変えるコツ
ハローワークに異議を伝える

先に紹介したように、会社を退職して失業手当を受給したい人は、退職時に会社から発行された「雇用保険被保険者離職票」を持ってハローワークで手続きをします。

この離職票は「1」と「2」に分かれていますが、1は失業手当が支給される金融機関の口座番号などを書くためのもの、2は離職前の賃金の状況や離職理由や具体的な事情などが既に記入されています。

<離職票1,2>
退職理由を自己都合から会社都合にする方法

ここで大事なのは離職理由と具体的な事情で、ここには会社側がハローワークに対して「この人はこんな理由で退職しました」ということを記入しています。

そして同時に、離職者側が離職理由と具体的な事情を記入する欄もあるのです。

退職理由と具体的な事情について、会社と離職者の間に見解の相違がなければ同じで構わないのですが、もし見解の相違がある場合は、会社の書いた内容と異なる内容を離職者が記載することができます。

その上で離職者は、ハローワークに対して「会社はこのように書いていますが、実際はこのような理由で退職しました」という説明をすることもできます。

退職理由が「会社の倒産や解雇など」や「労働契約の未更新」「正当な理由のある自己都合退職」のように特定受給資格者・特定理由退職者に該当しそうな場合も、ここでその旨をアピールするとよいでしょう。

ハローワークは離職者の話を聞いた上で、必要があれば会社側に電話で確認するなどした上で、最終的に離職者を「一般離職者」「特定受給資格者」「特定理由離職者」のいずれかに分類します。

もしも退職理由を自己都合から会社都合に変えたければ、つまり一般離職者から特定受給資格者や特定理由退職者に変えたければ、自分にその「資格」があるということをハローワークに伝えなければならないわけです。
 

退職理由を会社都合に変えるコツ
具体的で客観的な証拠を見せる

ハローワークを説得するためには、具体的かつ客観的な「証拠」を提示するのがもっとも有効です。

例えば、事業所の移転で通勤が困難になって辞職した場合は、特定受給資格者として認められる可能性がありますが、これを証明するには「事業所移転の通知」や「事業所の移転先がわかる資料」そして「離職者の通勤経路にかかる時刻表」があるとよいです。

また、提示された労働条件と実際の労働事情が異なる場合も「提示された労働条件が記載された労働契約書」と「実際の労働状況がわかるタイムカードのコピー」などを提示すればハローワークを説得しやすくなります。

もしタイムカードがなくても、メールの送信履歴を取っておいたり、出退勤を日々メモしておいたりすることでも“証拠”になるので、退職をしようと考えているなら取っておくようにしましょう。

 

退職理由を自己都合から会社都合にする方法:まとめ

以上、退職理由を自己都合から会社都合にする方法について、失業手当における自己都合退職と会社都合退職の違い、一般離職者と特定受給資格者と特定理由離職者の定義、特定受給資格者と特定理由離職者に認定されるためのコツを紹介しました。

失業手当を受給するのは、労働者の正当な権利です。

「間違いなく自己都合退職」のケースは別にして、「会社の倒産や解雇など」「労働契約の未更新」「正当な理由のある自己都合退職」の場合は、特定受給資格者・特定理由離職者となって失業手当を有利な条件で受け取りましょう。