退職代行の選び方
このページでは、退職代行サービスを利用する際に最低限知っておきたいことを厳選してまとめています。
人事総務のプロが実際に退職代行を利用して感じた「失敗しないで安全な退職代行」について忖度なしにお伝えしますので、ぜひ内容をチェックしてみてくださいね。
1. はじめに
退職代行はここ数年でメジャーになってきた退職支援サービスです。
退職代行サービスについては、簡単かつ効率的に会社を辞められる一方で、認識不足から会社側とトラブルになったというケースも後を絶ちません。
そこで実際に会社で実務をこなす人事総務のプロの目を通じ、退職代行についての正確で生きた情報を当サイト「退職代行の選び方」へ一元的にまとめることとしました。
「退職代行の選び方」は退職代行について全てがわかるガイドブック的な内容を目指しており、退職代行のメリットやデメリット、注意点、安心して依頼できる業者の見分け方といった退職代行に関する内容をわかりやすく解説。
また、当たり外れの大きい退職代行の業者選びについても、実際に使ってみた感想や問題点を忖度なしで公開し、失敗しないおすすめの退職代行業者選びができるようになっています。
退職は人生にとって重要な分岐点。退職代行を上手に活用して新たな再出発を図りましょう!
2. 退職代行とは
退職代行とは、会社を辞めたい人に代わって会社へ退職の意思表示をしてくれるサービスです。
退職代行サービスを利用するには費用がかかりますが「退職するだけなのにお金を払うなんて…」と感じる方も多いかもしれません。
たしかに退職する自由は労働者に認められた権利ですが、世の中は労働者の権利に理解を示す会社ばかりではなく、労務上の問題を抱えた“ブラック企業”も数多く存在します。
どんな時に退職代行が必要となっているのか、具体的な事例を見てみましょう。
2-1. 退職代行はこんな時に使われる
事例1)退職が言い出しにくい・言い出せないケース
私も経験がありますが、会社へ退職の意向を伝えるのは、簡単のように見えて難しいものです。
今とは環境を変えたいと思っていても、良い職場、ブラックな職場を問わず、会社へ「退職したい」と言い出せず、ズルズルと数か月・数年と時間だけが経っていく…といった経験をした人も多いでしょう。
そういう時に第三者である退職代行を利用するのが最も多いケースです。
事例2)上司のパワハラなどが横行しているケース
上司が部下に対して高圧的に接する“パワハラ”気質の会社はまだまだ多く存在していて、そういった場合、上司への恐怖心から本当は退職したいのに言い出せないことがあります。
さらにパワハラなどのハラスメントが継続することにより、心を病んで退職を会社に伝えるのが難しくなるケースも。こうなると会社にいること自体が苦痛になってきます。
そういった場合は退職代行で今の環境から抜け出すのが良いでしょう。
事例3)退職を承認してくれず先延ばしにされるケース
退職の意思を上司に伝えたが上司預かりになってしまった、後任に引き継ぎが完了するまで退職を先延ばしするよう説得された、退職時期を会社が指定してきて大幅に退職が遅れそう、といったケースです。
人手不足が目立つ中小企業を中心に最近よく耳にするケースで、実際、かなり強い退職の引き留めも増えてきているようです。
本来、退職は自分のタイミングでするべきなので、2〜3か月以上先延ばしにされるようなら退職代行を使ってみるのも良いでしょう。
事例4)退職申請後に嫌がらせをされるケース
退職願を会社に出した途端、上司や同僚から冷たい仕打ちを受けたり、退職までの期間で嫌がらせが続くケースもあります。
仕事や引き継ぎに必要なファイルにアクセスできなくしたり、仕事が振られなくなったり、逆に面倒な仕事を押し付けられたりするハラスメント的な環境に置かれて心身を病んでしまう人もいます。
「もう職場にいたくないな」と感じたら退職代行を使って前倒しで辞めたり、有休消化に入ったりすることも検討しましょう。
このような形で退職代行を利用する方が増えてきているのが現状ですが、比較的新しいサービスということもあり、様々なトラブルも起きています。利用者としても退職代行のことをよく理解した上で利用することが重要といえるでしょう。
3. 退職代行選びで知っておきたい10のポイント
退職代行を利用する際に最も重要なのは「どの代行業者を使うか」です。
退職代行で失敗した人の大多数は「代行業者選びで失敗した」と言っても過言ではないでしょう。
私自身このサイトを作るにあたり実際に退職代行サービスをいくつか使ってみましたが、その中で気になった「退職代行業者選びをする上で押さえておきたい10のポイント」をまとめておきます。
3-1. 退職代行は3つの種類がある
まず知っておきたいのは「退職代行の種類」についてです。
退職代行って一つじゃないの?と思われるかもしれませんが、実は退職代行は運営母体によって以下の3つに分類されます。
下表の通り、種類によって法的にできること・できないことが明確に定まっているので、退職代行を選ぶ際には一番にチェックしなければならないポイントです。
業務内容 | 一般法人 | 労働組合 | 弁護士 |
---|---|---|---|
退職意思の伝達 | ◯ | ◎ | ◎ |
退職に関する調整 | × | ◎ | ◎ |
有休消化申請 | × | ◎ | ◎ |
離職票などの請求 | × | ◎ | ◎ |
裁判になった時の対応 | × | × | ◎ |
料金相場 | 1〜2.5万円 | 2.2〜3万円 | 5〜10万円 |
3-2. “代理権限”のない退職代行業者は選んではダメ!
退職代行を実行する際、代行業者が会社へ連絡して退職日の決定や退職手続きの進め方、返却物・送付物の確認などの退職交渉を行います。
本人の代わりに会社側と退職交渉をすることになるわけですが、法的に認められない者が本人の代わりに交渉してしまうと「違法行為」となり処罰の対象となります。
具体的には、前述の3つの種類のうち、運営者が弁護士・労働組合のものは本人の代わりに会社側と退職交渉する法的根拠を持っていますが、一般法人が運営する退職代行は会社側との退職交渉はできません。
上の表にある通り、一般法人が運営する退職代行でできることは「◯◯さんが会社を辞めたいと言っています」ということを伝えることだけで、退職に関する交渉事はすべて出来ません。かなり多くの一般法人運営の業者が参入していますので、料金が安いからといって利用しないようにしましょう。
3-3. 退職失敗!違法性の高い退職代行業者とは?
前項で一般法人が運営する退職代行の違法性が高いことに触れましたが、法的根拠がないことを知っている企業の人事担当者であれば、退職代行を撃退することも可能です。
撃退方法は簡単で「一般法人は本人の代理権限を持っていない」「退職交渉をすると違法行為になる」ことを代行業者側に伝えれば、業者はスゴスゴと引き下がるしかありません。
その場合、業者側は返金処理して無かったことにするのかもしれませんが、退職代行に失敗したご本人は退職できないばかりか、会社から事情を聞かれたりと踏んだり蹴ったりの状態になります。
このようなリスクを冒さないように弁護士もしくは労働組合運営の退職代行サービスを利用するようにしましょう。
3-4. 退職代行選びは「運営者」を必ずチェック!
ここまで「退職代行は運営母体によって3つに分かれていて、弁護士もしくは労働組合運営の退職代行サービスを利用する」ことに触れましたが、この時にチェックするのが代行業者の「運営者」です。
代行業者のホームページには通常「運営者情報」が記載されているはずです(運営者情報が記載されていない業者は論外!)。そのページを見れば、運営者が弁護士・労働組合・一般法人のどれなのかがわかります。運営者が株式会社や合同会社の場合は、一般法人運営の退職代行なので利用しないのが良いでしょう。
ただし最近は、運営者が労働組合になっていても実際は一般法人が運営している“偽装労働組合”も増えてきました。この“偽装労働組合”の見分け方については次の項目でお知らせします。
3-5. さらに“偽装労働組合”もチェック!
労働組合は比較的簡単に設立することができるため、労働組合を使って一般法人が退職代行を運営するケースが最近増えてきています。
本来、労働組合は会社経営からは独立しなければならないと法律で定められているため、一般法人とセットとなった“労働組合”は労働組合の要件を満たしていません。そのため「一般法人が運営する退職代行」の分類となり、違法性が高い代行業者といえます。
こういった“偽装労働組合”運営の退職代行を見極める方法ですが「料金の振込先銀行口座を聞く」のが一番簡単です。
振込先銀行口座を聞いてみて口座名義が労働組合名ではなく一般法人名の場合は、ほぼ100% “偽装労働組合”運営の退職代行と見てよいので、依頼は避けるようにしましょう。
こんなケースも
銀行口座名義が一般法人になっている理由として「収納代行会社を利用しています」という業者もありましたが、どういう理由であっても労働組合の口座名義が一般法人なのは不自然です。
3-6.「弁護士監修」「労働組合提携」の言葉にだまされるな!
退職代行のサイトを見ていると「一般法人運営の退職代行」の多くで「弁護士監修」「労働組合提携」という文字が踊っています。
一見すると、弁護士や労働組合が運営協力をしているようなニュアンスですが、実は「弁護士監修」「労働組合提携」には何の意味もありません。運営上で弁護士や労働組合が責任を持ってくれるわけではなく、弁護士や労働組合の運営としてみなせる訳でもありません。
「弁護士監修」「労働組合提携」と書かれていても、扱いは「一般法人運営の退職代行」のままで、違法性の高いことには変わりはないので注意しましょう。
3-7. 退職代行は退職率100%が当たり前!
同じく退職代行のサイトで良くみる文言に「退職率100%継続中」というものがあります。
ただ、これはある意味当たり前で、そもそも我が国で働く人には退職する自由が法律で保障されています。一部の契約社員や公務員などを除けば、退職の意思表示を会社にして一定期間が経過すれば自動的に退職が成立します。
必ず退職できる人のみを対象として退職代行を実行するのであれば「退職率100%」は当たり前といえます。
ちなみに一般法人運営の退職代行については撃退されることもあり、一定度の割合で退職代行が失敗していますが、失敗して返金処理をした場合は退職率のカウントから除外している業者もあるようです。
いずれにしても「退職率100%」は退職代行選びの参考にしない方がいいでしょう。
3-8. アフィリエイト広告を使っている業者は要注意!?
退職代行を利用する際にネットで情報を得ようと思う方は多いでしょう。
ただその一方で、退職代行業者の評判を検索したら良い内容だったので依頼してみたら最悪だった、という話も割とよく聞きます。
ネット上の情報で注意したいのは「アフィリエイト広告利用の有無」。
アフィリエイト広告とは、ブロガーなどが書いた紹介記事経由で商品購入などの成果が発生した際に報酬が支払われる「成果報酬型のインターネット広告」のことですが、基本的に広告主(退職代行業者)に対してネガティブな内容の記事はほとんど見かけません。そのためネット検索して得られた情報が良い内容だけに偏ることになります。
また「ステマ(ステルスマーケティング)」と呼ばれますが、宣伝と気づかれないように商品を宣伝したり、商品に関するクチコミを意図的に発信しているケースも多く見られます。
退職代行を選ぶのであれば、できればアフィリエイト広告を利用していないのが望ましく、アフィリエイト広告を利用している業者についてはネット上の評判を割り引いて考えるようにしましょう。
さらに、弁護士については職務規定や倫理規定上、広告利用について一般業種よりも制限が大きく、基本的にアフィリエイト広告の利用はグレーゾーンに当たります。弁護士の退職代行を利用したい方はアフィリエイト広告を利用している業者を避けることをおすすめします。
3-9. 退職代行業者は適当すぎ?外注&引継ぎは当たり前?
このサイトを作るにあたり、実際にいくつか退職代行を利用してみましたが、業務的にかなりアバウトで適当だと感じることも多々ありました。
一番気になったのは「担当者が都度変わる」ということ。
退職代行を利用する場合、LINEでのやり取りが一般的ですが、最初の無料相談・申し込み・事前ヒアリング・退職代行実行の報告といった節目節目で担当者が変わるため、伝えたことが伝わっていないことが幾度もありました。細かい依頼をお願いしてもきちんと引き継がれるのか怪しい、といった印象です。
また、退職代行の実行業務を(勝手に)外部へ委託している業者もあり、個人情報などの取り扱いが杜撰と感じたことも。
退職は失敗できない重要なことですので、できれば専任の担当者が付いてくれる代行業者が良いでしょう。
3-10. 退職代行は退職できたら終わりではない!
退職代行サービスの業務は、退職届が会社に到着して退職手続きが完了し、退職者が必要とする離職票などの書類が手元に到着するまでです。
しかし実際に退職代行業者とやり取りをしていると、退職したい旨を会社に伝達した時点で自分たちの業務は終了!と考えているところがほとんど。
そういった意味ではアフターケアー・アフターフォローがしっかりしている退職代行を選ぶ必要があります。フォロー期間は最低でも退職代行の実行日から1か月、できれば2か月以上ある業者を選ぶのがおすすめです。
4. まとめ
このページでは、私が実際にいくつか退職代行サービスを使ってみた経験も踏まえ、退職代行を利用する際に最低限知っておきたいことを厳選してお伝えしました。
当サイトでは、他にも退職代行についての情報や退職代行業者についての使用感など、このページでお伝えしきれなかった内容を詳しくご紹介しています。
退職代行を使って失敗しないためにも、ぜひチェックしてみてくださいね!