「退職代行」というサービスは世の中に定着しつつあり、会社を退職する際に利用しようと考えている人も多いと思います。
しかし退職代行には「気軽に会社を退職できる」というメリットの反面、デメリットもあり、このデメリットを理解しないまま退職代行を利用して、退職に失敗するケースもあるようです。
せっかくお金を出して退職代行を利用するのなら、失敗なくスムーズに退職したいもの。
ということでこのページでは、退職代行のデメリットの具体例を挙げ、失敗しない退職代行サービスの使い方をまとめます。
適切な業者選びのためにも、退職代行の利用を考えている際はぜひご一読ください。
退職代行のデメリットは7つ!
回避方法はある?
それではさっそく退職代行のデメリットを7つと、そのデメリットを回避するための方法をそれぞれ紹介します。
退職代行のデメリット①
退職後に会社の人との関係が悪くなる
退職は本来自分で上司にその意思を申し出、了承を得てから様々な引き継ぎを済ませ、最後に各方面に退職の挨拶をしてから行うものです。
しかし退職代行を使うということは、これらのプロセスを全部すっ飛ばして、退職代行業者による「〇〇さんは御社を退職します」という連絡一本で強引に退職することになります。
これは退職に伴う煩雑さを伴わないので、ある意味では非常にラクに退職できるのですが、会社の人に対してはどうしても「あいつは飛んだ(逃げた)」という印象を残してしまいがち。
退職代行を使わざるを得ない事情を理解してくれる人もいるでしょうが、退職代行を利用した退職には賛否両論があり、否定的に捉える向きも少なくありません。
そのため、退職後は関係悪化は避けられず、会社の人とは縁を切る覚悟を持っておいた方がよいでしょう。
【対策】関係を続けたい人には事前に根回しをする
もしどうしても退職後も関係を続けたい人がいるなら、事前に自身が退職を考えている状況を伝えておいたり、場合によっては退職代行を使って退職することを伝えておくとよいでしょう。
ただし退職代行を使って退職することを事前に会社の人に伝えてしまうと、会社や上司に漏れてしまうリスクは頭に入れておくべきです。話をするのであれば、信頼できる相手に絞りましょう。
退職代行のデメリット②
会社から自身や実家・保証人に連絡が行くことがある
退職代行を使って退職すると、会社から「どういうことなのか?」「本当に退職するのか?」「退職を止めて欲しい」などの連絡がくることがあります。
どの退職代行業者も「会社から連絡がいくことはありません」と謳っていますが、これはあくまでも退職代行業者から会社に対する「お願い」に過ぎません。会社が依頼者に連絡をすることを完全に止めることはできないのです。
場合によっては実家や保証人に会社から連絡が行き、思いもよらず大騒ぎになってしまうことも考えられます。
【対策】弁護士が運営する退職代行業者に依頼する
連絡が行くことを防ぐのに有効な手段としては、弁護士が運営する退職代行業者の利用がおすすめです。
弁護士運営であっても会社が依頼者へ連絡することを100%止めることはできませんが、ただの民間業者や労働組合が運営する退職代行業者に比べると「バッジの重み」がある分、十分な抑止力となります。
退職代行のデメリット③
同じ業界に転職しづらい
狭い業界だと、同業他社の人事情報は筒抜けになってしまうもの。そのため退職代行を使って強引に退職したことも、業界が狭いと同業他社にはすぐに知られてしまう可能性が大です。
狭い業界内転職を予定して退職代行を使う際には、十分な注意が必要です。
【対策】覚悟を決める・同業や隣接業界での転職を諦める
同業・隣接業界での転職を考えている場合、退職代行を使った退職は相当な覚悟をする必要があります。
転職活動が厳しくなることはもちろん、転職後も「あの人は〇〇社を飛んだ人だ」と後ろ指を指されることもあるかも。
場合によっては同業・隣接業界での転職は諦め、まったく別の業界で働くことを視野に入れておきましょう。
退職代行のデメリット④
料金がかかる
当たり前の話ですが、退職代行業者に依頼すると料金がかかります。
退職代行業者は大きく「一般企業が運営するもの」「労働組合が運営するもの」「弁護士が運営するもの」の3つに分かれますが、料金の相場は一般企業が1~2万円、労働組合は2~3万円、弁護士は3~10万円程度となっています。
退職代行を使うと退職に伴うあれこれの煩雑さから解放されるのは大きなメリットですが、どうしても万単位の料金がかかってしまうのは避けられないデメリットでしょう。
【対策】料金の安い一般企業の業者に依頼する
料金を安く済ませたい場合、一般企業が運営する退職代行業者がおすすめです。
ただし、労働組合法に基づき団体交渉ができる労働組合や、弁護士法に基づき一切の法律事務ができる弁護士に比べると、一般企業の業者はできることが限られます。
サービス品質も一定ではないため、多くの実績を持つ信頼できる業者を選ぶ必要があります。
退職代行のデメリット⑤
有給消化・未払い給与や残業代の交渉・請求ができない場合がある
退職に伴い有給休暇が残っている場合や、未払い給与や残業代がある場合はこれらの取得・請求の交渉をしたいところ。
しかし、取得・請求ができる退職代行業者は労働組合と弁護士のみで、一般企業の運営業者はできません。
これは弁護士法72条(非弁行為)の縛りがあるため(労働組合は労働組合法6条により例外)で、一般企業の運営業者が有給消化や未払い給与・残業代請求の交渉をしたとしても、会社側から無効を主張され、すべてを覆される可能性があります。
一般企業・労働組合・弁護士によってできることを以下の表にまとめたので、参考にしてください。
3つの退職代行業者の特徴
一般企業 | 労働組合 | 弁護士 | |
---|---|---|---|
退職意思伝達 | 〇 | 〇 | 〇 |
即日退社 | 〇 | 〇 | 〇 |
会社との交渉 | × | 〇 | 〇 |
裁判の代理人 | × | × | 〇 |
料金の相場 | 1~2万円 | 2~3万円 | 3~10万円 |
【対策】労働組合か弁護士が運営する退職代行業者に依頼する
会社との「交渉」が予想される場合、労働組合か弁護士が運営する退職代行業者に依頼しましょう。
さらに交渉することが多岐に渡る場合や、相手がブラック企業などで難易度が高そうな場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
退職代行のデメリット⑥
ボーナス(賞与)がもらえない場合がある
退職代行を利用した退職の場合、ボーナス(賞与)がもらえない場合があります。
働いた分の給与の支給は労働基準法で定められているので、必ずもらうことができます。しかしボーナスの支給は法律の定め、つまり支払い義務がなく、それぞれの会社の就業規則で定められているに過ぎません。
そのため「ボーナスの支給対象期間は勤務していたのでボーナスはもらえるはず」と思っても、就業規則によっては支給されないことがあるので要注意です。
【対策】ボーナスが支給されてから退職する
確実にボーナスを受け取るには、ボーナスが支給されてから退職するのがおすすめです。
もしボーナス支給前に退職する場合は、就業規則の中のボーナスに関する項目、特に「支給不可・減額の条件」の有無を確認しておきましょう。
退職代行のデメリット⑦
有期雇用契約の社員や公務員は退職代行を利用できない場合がある
無期雇用契約は法律で「退職の申し出から自動的に2週間後に退職できる」と定められています。
そのため正社員の多くは退職代行を利用した退職に失敗することはありません。
しかし有期雇用契約の場合、契約から1年を経過していなければ「やむを得ない事情」がない限り退職できません。
最終的に退職できないことはないのですが、会社に法律を盾にされると退職交渉がスムーズに進まないことも。
また公務員の退職は原則として任免権者(大臣や知事・市区町村長など)が法律に基づいて行うことになっていて、民間のように退職代行を利用して簡単に退職することはできないので、注意が必要です。
【対策】経験豊富な弁護士が運営する退職代行業者に依頼する
有期雇用契約の社員や公務員は退職交渉が難しい、というだけで、退職できないというわけではありません。
そのため民間業者や労働組合ではなく、有期雇用契約や公務員の退職代行経験が豊富な退職代行業者(できれば弁護士運営の業者)に依頼するのがおすすめです。
デメリット以外に考えられる退職代行のリスクやトラブルは?
次に、デメリット以外に考えられる退職代行のリスクやトラブルも確認しておきましょう。
悪質な退職代行業者に遭遇する可能性がある
退職代行サービスは、資格や許可の必要がなく誰でも始めることができるため、中には悪質な退職業者も存在します。
悪質な退職業者に遭うと「料金を支払ったら音信不通になった」「退職に失敗した」のいずれかの事態に陥ることも。
特に一般企業が運営する退職代行業者の場合は、会社がしっかり存在しているのか、本当に退職実績があるのかを確認する必要があります。
労働組合の場合は退職代行のサービス名だけではなく、労働組合の名前も確認するようにしましょう。
懲戒解雇や損害賠償請求に発展する可能性がある
通常の無期雇用契約の場合、退職は退職代行の利用に関わらず合法的にできます。
しかし会社が常識の通じないブラック企業の場合や、法律的に自由に退職できない有期雇用契約に該当する場合、退職が認められず懲戒解雇にされることや、損害賠償請求に発展したケースもあります。
最終的に裁判になっても、余程のことがなければ会社側の訴えが認められることはありませんが、面倒なトラブルに巻き込まれる可能性があります。
一悶着ありそうな時は、弁護士運営の退職代行業者を使うすると安心です。
退職代行を選ぶ際のポイントとは?
最後に、退職代行を選ぶ際のポイントを3つ紹介します。
労働組合か弁護士が運営する退職代行業者を選ぶ
退職代行を選ぶ際は、労働組合か弁護士が運営する退職代行業者を選ぶのが無難でしょう。
その理由は、先に紹介したように、労働組合と弁護士は法律に基づいて会社と様々な交渉ができるからです。
これに対して一般企業が運営する業者は交渉ができず、業者選びも難しいのが実情です。
労働組合か弁護士か、については「退職の困難さ」を基準にして決めましょう。
普通の会社に普通に勤めていて、普通に退職するなら労働組合の運営する退職代行業者で十分。
しかしコンプライアンス意識が薄い会社やブラック企業に勤めていたり、既に会社と何らかの揉め事を構えている場合などは弁護士に依頼した方がよいでしょう。
口コミや評判を確認して実績の高い業者を選ぶ
退職代行業者選びの際は、口コミや評判をよく確認することも大切。
退職代行業者の中には、公式サイトにこれまでの退職代行実績数や利用者の声を掲載しているところも多いので、これらを参考にするとよいでしょう。
当サイトでも公平性の観点から主な退職代行業者の評判をまとめているので参考にしてみてください。
相場に対して適正な料金の業者を選ぶ
世の中の他のサービスと同じく、退職代行にも料金の相場というものがあります。
相場は前述のように、一般企業は1~2万円、労働組合は2~3万円、弁護士なら3~10万円程度です。
この料金を大きく下回る料金の業者は悪質な業者の可能性が高く、警戒した方がよいでしょう。
例えば、一般企業で3,000~5,000円前後の料金で請け負っている業者は、適当な退職連絡の電話をかけるのみで、貸与物の返却や離職票の受け取りをどうするかなどの調整をしなかったりといい加減なサービスだったという例も。
退職代行業者探しの際は、料金の相場を意識するようにしましょう。
退職代行のデメリットと失敗しない退職代行サービスの使い方:まとめ
以上、退職代行のデメリットの具体例と失敗しない退職代行サービスの使い方を紹介しました。
退職代行サービスを上手く使えるかどうかの鍵は「業者選び」にかかっている、といっても過言ではありません。自分の状況に併せて適切な業者を選べば、想定されるデメリットの多くは回避できるでしょう。
そのためには退職代行ビジネスのことをよく知った上で、退職代行業者を比較することが大切。
真っ当なサービスを提供している退職代行会社もたくさんあるので、正しい情報で自分に合った退職代行サービスを見極めるようにしましょう。