退職 手続き 年金 健康保険 失業手当

退職したらやることは?年金・健康保険・失業手当の手続きを解説

会社を退職したら行うべき手続きが色々ありますが、中でも「年金」や「健康保険」に関する手続きは特に大切。

なぜならこれらは現在、そして未来の生活を安心して送るためには、切れ目なく継続する必要があるからです。

また退職後に転職活動を行う場合は、失業手当の手続きもしなくてはなりません。

しかしこれらの手続きは煩雑ですし、どの順番で行うべきか、わからない人も多いのではないでしょうか。

ということで今回は、会社を退職した人の年金・健康保険・失業手当の手続き方法について紹介します。

会社の退職を控えている人や、会社を退職した直後の人はぜひ参考にしてくださいね。

 

退職したらやること
健康保険の手続きをする

まず最初に、退職後の健康保険の手続きについて紹介しますが、会社を退職した後、健康保険に関して取り得る選択肢は以下の3つがあります。

  1. 家族の健康保険の被扶養者になる
  2. 国民健康保険への切り替え
  3. 会社員時代の健康保険の「任意継続」

それぞれ詳しく説明していきます。

健康保険の手続き
① 家族の健康保険の被扶養者になる

これは親や配偶者など、家族の誰かに健康保険の被保険者がいる場合に取り得る選択肢です。

ただし親や配偶者が国民健康保険の場合、健康保険の被扶養者になることはできません。なぜなら国民健康保険には「扶養」という概念自体がないからです。

そして親や配偶者が「国民健康保険 以外」の場合、家族の健康保険の被扶養者になるためには、以下のような収入条件があります。

  • 被保険者と同居の場合は130万円未満で、被保険者の収入の半分未満
  • 被保険者と別居の場合は130万円未満で、被保険者からの仕送り額未満

この条件をクリアすれば、家族の健康保険の被扶養者になることができます。
 

家族の健康保険の被扶養者になる際の手続き期限と手続き方法

手続き期限 事由発生後5日以内
手続き場所 被保険者の会社の担当部署
手続きに必要なもの 「被扶養者移動届」の他、「マイナンバー確認書類」「戸籍謄本や住民票」など

家族の健康保険の被扶養者になる時の注意点は、手続き期限が「5日以内」と早いこと。退職後真っ先にこの手続きをする必要があります。

手続きは被保険者(扶養者となる家族)が勤めている会社に「被扶養者異動届」という書類を出し、管轄の年金事務所に手続きしてもらいます。

実際の手続きは被保険者の会社の担当部署で行ってくれますが、必要な書類は会社や健康保険、被扶養者になる人の状況などによって変わってきますので、詳細は担当者に確認してくださいね。
 

健康保険の手続き
② 国民健康保険への切り替え

退職後に健康保険の手続きをする際、国民健康保険への切り替えは最も一般的な選択肢でしょう。

日本は「国民皆保険制度」を敷いている国で、赤ちゃんからお年寄りまで、日本人であれば必ず何らかの健康保険に加入することになっています。

健康保険には「組合健保」「協会けんぽ」「各種共済組合」のような「社会保険」や、75歳以上の人や65歳以上75歳未満で一定の障害がある人などが加入する「後期高齢者制度」など色々ありますが、これらのいずれにも加入していない人(加入できない人)は、国民健康保険に加入します。

国民健康保険へ切り替えをする際の注意点は、会社の健康保険で被扶養者扱いだった家族がいる場合、家族も含めて全員の手続きをする必要があるということ。

先ほども触れたように、国民健康保険には「扶養」という概念がありません。つまり家族1人1人が加入する必要があることを覚えておくようにしましょう。

退職に伴う切り替えであれば、扶養家族のいる方は、保険料が以前よりもアップする可能性が高いので、次の項目で触れる「任意継続」も含めて比較検討することをおすすめします。
 

国民健康保険への切り替えの手続き期限と手続き方法

手続き期限 事由発生後14日以内
手続き場所 市区町村役場
手続きに必要なもの 「健康保険資格喪失証明書」「本人確認書類」

ちなみに手続き自体は簡単で、住んでいる市区町村役場に健康保険窓口がありますので、その窓口で「会社を退職したので国民健康保険に切り替えたい」と伝えた上で必要書類を提出すれば、すぐに手続きをしてくれます。
 

健康保険の手続き
③ 会社員時代の健康保険の「任意継続」

任意継続,/span>」とは、以前勤めていた会社で加入していた健康保険を、退職後もそのまま継続することです。

任意継続は、退職後いずれ近い将来どこかに転職する場合、おすすめの選択肢です。

なぜなら「退職した会社の健康保険 → 家族の健康保険の被扶養者になる & 国民健康保険に加入する → 転職先の会社の健康保険」というステップよりも「退職した会社の健康保険 → そのまま任意継続→ 転職先の会社の健康保険」というステップの方が、手続きが少なく済むからです。

ただし「任意継続」には条件があり、退職前日までに被保険者期間が2か月以上継続していることが必要で、期限が2年間となっています(75歳以上の人は後期高齢者医療制度に移行することになるため、任意継続の対象外)。

逆にいえば、2年以内に転職するつもりの人は任意継続が最もお手軽です。
 

任意継続の手続き期限と手続き方法

手続き期限 退職日の翌日から20日以内
手続き場所 勤務していた会社の担当部署
手続きに必要なもの 「任意継続被保険者資格取得申出書」、その他「『健康保険被保険者資格喪失届』のコピー」など

会社員時代の健康保険の任意継続の手続き方法は、加入していた健康保険によって多少異なります。

共通しているのは健康保険側へ「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出することですが、その他に「健康保険被保険者資格喪失届のコピー」など、健康保険の被保険者である資格を喪失したことを証明する書類や、被扶養者がいる場合は被扶養者の戸籍謄本や住民票、マイナンバーカードなどが必要になることもあります。

詳しくは、退職前に会社の担当部署に確認するようにしてくださいね。

 

退職したらやること
市区町村役場で国民年金の手続きをする

ここまで健康保険の手続きについて見てきましたが、次に国民年金の手続きについてまとめていきます。

「フリーランスや自営業者は国民年金」「会社員は厚生年金」というイメージがあるので、「会社員に国民年金は関係ない」と思っている人が多いですが、これは違います。

日本の年金制度は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金(基礎年金)を1階部分として、会社員などが加入する厚生年金を2階部分とする「2階建て」になっています。これを「国民皆年金制度」といいます。

つまり会社員であっても、国民年金の手続きは必要ということ。

なお、国民年金にしか加入していない学生や無職、自営業・フリーランスのような人を「第1号被保険者」といい、国民年金に加えて厚生年金などに加入している人を「第2号被保険者」、第2号被保険者に扶養されている年収130万円未満の人を「第3号被保険者」といいます。

退職後の年金の手続き方法は、退職後の選択肢によって変わるのでそれぞれの手続きについて見ていきましょう。
 

年金の手続き
① 退職後すぐに転職する場合

会社を退職後、離職期間を置かずに、もしくは退職した月と同じ月に別の会社へ転職する場合、国民年金に関する手続きは転職先の会社で行ってくれます

その際は年金手帳または基礎年金番号通知書を転職先に提出してください。
 

年金の手続き
② 退職後に離職期間がある場合や自営業・フリーランスになる場合

退職後に離職機関がある場合や自営業・フリーランスになる場合は、居住する市区町村役場で国民年金への切り替え手続きが必要になります。

これは先に触れたように日本は国民皆年金制度を敷いているため、年金加入期間に空白期間を作らないためです。

会社員であれば(国民年金を「1階」にした上で)厚生年金に加入するので、年金関連のことは会社任せで大丈夫でした。

しかし退職したら会社とは無関係になるので、年金の面倒はみてくれません。そのため自分で国民年金に切り替える必要があるわけです。
 

国民年金の手続き期限と手続き方法

手続き期限 退職日の翌日から14日以内
手続き場所 市区町村役場
手続きに必要なもの 「年金手帳」「印鑑」「『雇用保険被保険者離職票』など退職日が確認できるもの

これで健康保険・年金の切り替え手続きは完了、もう一息です。

 

退職したらやること
ハローワークで失業手当の手続きをする

健康保険・年金の切り替え以外にやらなければいけないことがもう一つあります。それがハローワークの手続き。

ということで最後にハローワークでやる失業手当(失業保険・失業給付金)の手続きについて紹介しましょう。

ハローワークの手続き
失業手当の受給資格を確認する

失業手当は誰でももらえるわけではなく、以下のような受給資格があります。

  1. 失業状態であること
  2. 離職の日以前2年間に雇用保険被保険者期間が通算12ヶ月以上あること
  3. ハローワークに行って、求職の申し込みをしていること

失業手当がもらえるかどうかで注意が必要なのは2つめの「雇用保険被保険者期間」の条件です。新卒で就職した後すぐに退職した人や、短期間に転職を繰り返しているような人は、条件に当てはまらない可能性があります。

過去2年間で通算12ヶ月以上あるという条件が原則ですが、倒産・リストラ・解雇などが原因で離職した「特定受給資格者」や、特定受給者以外の離職者で、いわゆる「雇止めに」なった人・病気や出産や配偶者の転勤などの理由で失業した「特定理由離職者」については、離職の日以前1年間に雇用保険被保険者期間が通算して6か月以上あれば失業手当を受給できます。
 

ハローワークの手続き
給付開始時期・給付期間を確認する

失業手当の給付は「給付開始時期」が退職理由によって、「給付期間」が退職理由と年齢・雇用保険の被保険者であった期間によって状況が変わります。
 

自己都合退職は2ヶ月の「給付制限期間」がある

一般的に退職理由は「自己都合退職」「会社都合退職」に分類されますが、失業給付においては「一般離職者」「特定受給資格者」「特定理由離職者」の3つに分類されます。

このうち一般離職者は自己都合退職者と、特定受給資格者は会社都合退職者とほぼ同じ意味です。特定理由離職者は、特定受給資格者以外で「保護すべき理由によって退職を余儀なくされた人」を指します。

特定受給資格者・特定理由離職者は、ハローワークでの手続き後すぐに失業手当が給付されますが、一般離職者は2か月の「給付制限期間」を経た後にやっと失業手当が給付されます。

 

失業手当の給付期間は90日~330日


失業手当の給付期間は、以下の通りです。

  (表は横にスクロールします)

退職理由 年齢 被保険者であった期間
1年未満 1年以上 5年以上 10年以上 20年以上
5年未満 10年未満 20年未満
会社都合退職

30歳未満 90日 90日 120日 180日 -
30歳以上 120日 180日 210日 240日
35歳未満
35歳以上 150日 240日 270日
45歳未満
45歳以上 180日 240日 270日 330日
60歳未満
60歳以上 150日 180日 210日 240日
65歳未満
自己都合退職(原則) 65歳未満 90日 90日 120日 150日

自分の年齢・被保険者期間・退職理由から失業手当が何日分もらえるのかを確認しておきましょう。
 

失業手当の手続き期限と手続き方法

手続き期限 退職した日の翌日から1年間(受給期間)
手続き場所 ハローワーク
手続きに必要なもの 「雇用保険被保険者離職票」「マイナンバーカード」「縦3.5センチ × 横2.5センチの証明写真2枚」「失業手当の振込口座がわかる通帳かキャッシュカード」

失業手当に手続き期限というものはありませんが、前章で紹介した給付制限期間と受給期間によって「実質的な手続き期限」が決まってきます。

というのも、失業手当の受給期間は「退職した日の翌日から1年間」となっていて、これは失業給付の申請とは無関係に進んでいきます。

そのため、給付制限期間と「自分の失業手当の受給期間」をよく把握しておかないと、失業手当の申請時期によっては「制度上の受給期間」の方が先に来てしまい、早く申請すればもらえるはずだった失業手当が、途中でもらえなくなってしまうことがあります。

例えば45歳以上60歳未満で、雇用保険の被保険者であった期間が20年以上の会社都合退職者は、失業手当の給付期間が330日となっています。

ということは、退職から90日や120日が経過してから手続きをすると、失業手当の満額受給ができなくなってしまう、ということです。

特別な理由がなければ、失業手当は退職後なるべく早く行うことをおすすめします。

ハローワークで手続きをして受給資格が決定すると、7日間の「待機期間」の後、「雇用保険受給説明会」を経て「初回失業認定日」があります。ここまでが約1か月間です。

特定理由離職者・特定受給資格者は、すぐに1回目の失業手当が振り込まれます。

一般離職者は待機期間満了の翌日から2か月の給付制限期間があります(この間に通常は雇用保険受給説明会・初回失業認定日・2回目の失業認定日がある)。2か月の給付制限期間が明けて、やっと1回目の失業手当が振り込まれます。

その後は、一般離職者・特定理由離職者・特定受給資格者いずれの場合も月に1度の失業認定日にハローワークに行って転職活動の状況を説明し、失業状態が認められればまた失業給付が振り込まれる、ということを繰り返していきます。

 

退職後の年金・健康保険・失業手当の手続き:まとめ

以上、退職したらやるべき年金・健康保険・失業手当の手続きについて紹介しました。

年金・健康保険・失業手当それぞれの手続きをどの順番で行うべきかは、人によって変わりますので一概にはいえませんが、手続きの期限が決められていて猶予が少ないものから着手していくべきでしょう。

あえていうなら、切れ目なく継続する必要のある年金と健康保険は優先すべき。特に病気やケガで病院に通院している人は、健康保険を最優先させることをおすすめします。

わからないことがあれば自分だけで考えるよりも、市区町村役場や健康保険組合の窓口などに相談しましょう。どういう選択がベストなのか、手続きはどうすれば良いのか、など担当の方が丁寧に教えてくれるはずです。

焦らず一つずつ手続きを終わらせていきましょう。