失業手当は、様々な理由で職を失った際に「生活の安定」と「先々の就業機会の獲得」のための一助として必要な資金が給付される制度です。
しかし失業手当の受給資格や手続きの方法は、やや複雑です。
手続きを正しく行わなければ、失業手当の支給を受けられないだけでなく、不正受給による罰則のリスクも。
ということで今回は、失業手当の受給に必要な要件や手続きの方法、支給額や受給期間、注意点などを解説しましょう。
失業手当のもらい方
失業手当の受給要件
まず最初に、失業手当はどういう人がもらえるのか「失業手当の受給要件」について見ていきます。
失業手当の受給要件
① 失業状態であること
失業手当を受給するには、大前提として「失業状態であること」が必要です。
失業状態とは、「離職し、就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にあること」と定義されています。
そのため「家業に就いている」「自営業を始めた(準備中を含む)」「家事手伝いをしている」「大学院に通って学業に専念している」「既に就職が決まっており、転職活動はしていない」という状態は失業状態とは認められません。
また、「病気やケガ」「妊娠・出産・育児」「結婚や家事」などですぐに就職できない時なども同様です。
失業手当の受給要件
② 離職の日以前2年間に雇用保険被保険者期間が通算12ヶ月以上あること
失業手当の原資は、雇用保険の被保険者が納めている雇用保険料です。
そして失業後に失業手当を受け取るには、この雇用保険に被保険者として一定期間加入していたことが必要です。
その期間は、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月(もしくは賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある月)を1ヶ月として数え、この月数が離職の日から遡った2年間のうち、通算して12ヶ月以上です。
ただし倒産・リストラ・解雇など、再就職の準備をする余裕なく離職せざるを得なかった「特定受給資格者」や、特定受給者以外の離職者で、契約更新を希望したのに更新されず雇止めになった人・病気や出産や配偶者の転勤などの理由で失業した「特定理由離職者」は、離職の日から遡った1年間のうち、雇用保険被保険者期間(賃金支払いの基礎となった日数が11日以上または賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上)が通算して6ヶ月以上あれば失業手当を受給できます。
失業手当の受給要件
③ ハローワークに行って、求職の申し込みをしていること
そして最も大事なのは、自身の居住地を管轄するハローワークに行って求職の申し込みをすることです。
ハローワークは正式名称を「公共職業安定所(通称:職安)」といい、厚生労働省が設置した国の行政機関です。
前出の2つの要件が揃っていても、ハローワークで求職の申し込みをした上で失業手当の受給手続きをしなければ、失業手当を受給することはできません。
失業手当のもらい方
失業手当の受給手続き
失業手当の受給要件を満たしていることが確認できたら、次に行うべきは失業手当の受給手続きです。
ここからは失業手当の受給手続きの具体的な流れを紹介します。
失業手当の手続き
失業手当の受給手続きに必要なもの
失業手当の受給手続きに必要なものは、以下の通りです。
- 雇用保険被保険者離職票(1と2)
- マイナンバーカード(ない場合はマイナンバーが確認できる「通知カード」か「個人番号の記載がある住民票」のいずれか1つと、運転免許証など官公庁発行の写真つき身分証明書1つもしくは保険証や年金手帳などのうち異なる2つ)
- 縦3.5センチ × 横2.5センチの証明写真2枚
- 失業手当の振込口座がわかる本人名義の預金通帳もしくはキャッシュカード
この中で特に重要なのは「雇用保険被保険者離職票」です。
雇用保険被保険者離職票とは?
「雇用保険被保険者離職票」とは、別名「離職票」とも呼ばれ、会社を離職したことを公的に証明する書類です。
会社は社員が退職すると、ハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出します。
するとハローワークから社員が退職した会社へ「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(離職票-1)」と「雇用保険被保険者離職証明書の本人控(離職票-2)」、そして「雇用保険被保険者離職証明書の事業所控」が送られてきます。
そして会社は退職した社員へ「離職票-1」と「離職票-2」を発行しますが、この時点で社員は既に会社を退職しているので、一般的には退職から2週間程度で郵送で送られてくることが多いです。
ただし会社がハローワークの窓口へ直接書類を提出して手続きを行った場合、離職票はすぐに発行されるので、この場合、退職する社員は即日離職票を手渡されることもあります。
通常、会社は退職者へ離職票を発行しますが、心配な場合は退職前に離職票の発行を依頼しておいたり、離職票の受け取り方を確認しておくとよいでしょう。
離職票は一部離職者の記入が必要な欄がある
離職票は離職者の手元に届いた時点でほとんどの必要事項は記入されていますが、マイナンバーと失業手当の振込口座、署名・捺印などは離職者自ら記入する必要があります。
その他、「離職票-2」には重要な記入項目があります。
それが「離職理由」と「具体的事情の記載」「離職者本人の判断」です。
このうち「離職理由」と「具体的事情の記載」は、退職した会社と離職者のそれぞれが記載できるようになっています。
退職した会社は既に記載しているはずですので、離職者は自分が考える離職理由や具体的事情を記載してください。
これは退職した会社の記載内容と異なっていても構いません。正直に記載しましょう。
そして退職した会社が記載した離職理由に対して異議がある場合、「離職者本人の判断」の欄の異議「有り」に丸をつけます。異議がなければもちろん「無し」に丸をつけても構いません。
最後に内容を確認し、間違いがなければ署名・捺印をします。
失業手当の手続き
居住地を管轄するハローワークへ行く
必要なものがすべて揃ったら、ハローワークへ行って失業手当の受給手続きをします。
手続きをするハローワークは、自分の居住地を管轄するハローワークです。予約の必要はありません。
ハローワークへ行くと「総合受付窓口」のような場所があるので、「失業手当の申し込みに来た」と告げてください。するとその後の動きを案内してくれるはずです。
この日は「受付票」を記入し、先ほど紹介した「必要なもの」と一緒に提出し、ハローワークの担当職員と面接を行いますが、面接では主に先ほど紹介した「離職票-2」の記載内容を元に退職の経緯を確認されます。
ここで退職の経緯によって「一般離職者」「特定受給資格者」「特定理由離職者」のいずれかに分類され、失業手当の受給資格が決定されます。
これで失業手当の受給手続きは終了です。
失業手当のもらい方
失業手当の受給手続き後、実際に受給するまでの流れ
ここからは、失業手当の受給手続きが済んだ後、実際に失業手当を受給するまでの流れを紹介します。
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1待機期間が7日間ある
失業手当の受給資格が決定されると、そこから7日間(土日祝日含む)は「span class="huto">待機期間」となります。
待機期間はハローワークの事務処理の為に設けられている期間で、離職理由に関わらずすべての離職者に適用されます。
この間で離職者にできることは何もありませんので、ひたすら7日間が過ぎるのを待つのみです。
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2雇用保険受給者(初回)説明会に参加する
7日間の待機期間が終わると、その1~2週間後に「雇用保険受給者初回説明会」というのが行われます。
雇用保険受給者初回説明会の日時は最初にハローワークに行った日に指定されます。
雇用保険受給者初回説明会では、失業手当の受給に関する重要事項の説明があります。
そして「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を渡され、初回の「失業認定日」が知らされます。
失業認定日とは、ハローワークで失業状態の確認を受ける日のこと。
一般的に初回の失業認定日は、失業保険の受給資格が決定した日(通常はハローワークで失業手当の手続きをした日)の1か月後になります。
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3初回失業認定日にハローワークへ行く
最初に紹介したように、失業手当を受給するためには「失業状態であること」が要件なので、ハローワークは失業手当受給者が「失業していること」と「就職活動をしていること」を、定期的に確認します。
失業認定日は4週間に1度です。
失業認定日にはハローワークへ就職活動の実績を記載した「失業認定申告書」を提出する必要があり、就職活動の実績が認められるなどして失業状態であることが認められると、失業手当が振り込まれます。
ここでいう就職活動とは、説明会への参加や試験・面接の受験などです。本気度は別にして、失業手当の受給には何らかの転職活動はしておく必要があるわけです。
初回失業認定日が無事終わると、その後はいよいよ初回の失業手当の振り込みとなりますが、ここから先は「一般離職者」と「特定受給資格者」「特定理由離職者」のいずれかによって展開が異なります。
一般離職者は2ヶ月の給付制限期間がある
一般離職者とは、自己都合で退職した人です。
一般離職者は、7日間の待機期間が満了した翌日から2ヶ月間の「給付制限期間」が設けられています。
この給付制限期間中に初回説明会や初回失業認定日があり、給付制限期間が明けるとその時点で失業手当が給付される、という流れです。
特定受給資格者と特定理由離職者はすぐに給付される
最初の章で紹介したような特定受給資格者や特定理由退職者は、会社の都合などでやむを得ず会社を辞めた人たちです。
転職活動の準備をする暇もなく会社を辞めてしまったため、自己都合で退職した一般離職者よりも緊急性が高く、すぐに失業手当を給付してあげる必要があります。
そのため給付制限期間が設けられていません。
7日間の待機期間の後、初回説明会に参加し、初回失業認定日にハローワークに行くことは変わりませんが、特定受給資格者と特定理由離職者は、初回認定日の直後に失業手当が振り込まれます。
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4初回失業認定日以降は4週間に1回失業認定を受ける
初回失業認定日以降は、4週間に1回失業認定日がやってきます。
その度にハローワークへ行き「失業認定申告書」を提出し、失業状態の認定を受けると失業手当が振り込まれる、ということを繰り返していきます。
一般離職者は2ヶ月の給付制限期間のうちに初回失業認定日と2回目の失業認定日が入ることになりますが、最初の失業手当の振り込みはその後です。
いつまで失業手当を受給できるの?
失業手当の受給期間は、「離職理由」「離職時の年齢」「雇用保険被保険者だった期間」によって変わります。
具体的な受給期間は以下の通りです。
退職理由 | 年齢 | 被保険者であった期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 | 5年以上 | 10年以上 | 20年以上 | ||
5年未満 | 10年未満 | 20年未満 | ||||
会社都合退職 | 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳未満 | ||||||
35歳以上 | 150日 | 240日 | 270日 | |||
45歳未満 | ||||||
45歳以上 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | ||
60歳未満 | ||||||
60歳以上 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
65歳未満 | ||||||
自己都合退職(原則) | 65歳未満 | - | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
自分の年齢・被保険者期間・退職理由から失業手当が何日分もらえるのかを確認しておきましょう。
失業手当のもらい方、正しい受給手続き:まとめ
以上、失業手当の受給要件と受給手続きの流れ、受給手続き後の実際の受給の流れ、受給期間などを紹介しました。
失業手当の支給を受ければ、生活は安定しますし、安心して就職活動も行うことができるはずです。
ぜひ手続き方法を知った上で、正しく受給手続きを行い、新たな一歩を踏み出してくださいね。